夏は全国的にバレエ発表会の開始が多い時期です。出演された皆様、先生方、スタッフの皆様、お疲れ様でした。

今回も数ヶ月間の練習を積み重ねて皆で作り上げた舞台に、カメラマンとして関わらせていただけたこと、とても嬉しく思います。

この記事では、バレエ発表会の撮影中に私が実際に何を考え、どう動いているのかをお話しします。「プロのカメラマンに撮影を頼むと、具体的に何が違うのか」が気になっている教室の先生方や保護者の方にも、参考にしていただけると思います。

舞台撮影は「どこから撮るか」で写真の価値が変わる

バレエ発表会の撮影では、シャッターを切る前の段階がとても重要です。「この演目は、どの位置から撮ったら良い写真になるか」を事前に考えておくことが、写真の仕上がりを大きく左右します。

群舞は「上から」だとより美しい絵が見られる

たとえば群舞のシーン。舞台全体に踊り手が広がるフォーメーションを、客席の前方から撮るとどうなるか。手前の人が大きく写って奥の人が隠れます。先生が何度もやり直して作り上げた隊形の美しさが、写真では伝わりづらいです。

こういう場合は、低い位置よりも2階席のような高い位置から撮ると、踊り手がどんな形で舞台全体に位置しているかが一目で分かるため、振付者が「この配置にしたかった理由」が、写真を通じてはっきり残ります。

ソロやパ・ド・ドゥは「低く正面」で指先まで伝わる

逆に、ソロのバリエーションやパ・ド・ドゥの場合は、正面の低めの位置から撮ると、より脚のラインや足先の角度はっきり出ることが多いです。つま先がどこまで伸びているか、手首の角度がどうなっているか。こういう細かなところは、上から撮るよりも低めの位置から撮った方が伝わりやすいです。

本番とゲネプロで撮り方が違う

ただし、本番中は客席の決められた位置からの撮影になるため、演目ごとにあちこち動き回るわけではありません。

だからこそ重要になるのが、後で説明するゲネプロでの撮影です。ゲネプロでは本番では撮影しない位置――2階席や舞台袖、客席の前方――から撮影することができます。群舞を高い位置から撮ったり、ソロを低い位置から撮ったりと、演目に合わせたアングルで撮れるのでゲネプロの時間も重要だと考えています。

なぜ撮影位置にこだわるのか

理由はシンプルで、写真を買うか買わないかは「その写真がご本人にとっていい写真かどうか」に尽きると思っているからです。

「いい写真」というのは、必ずしもピントがきれいで解像度が高い写真のことではないと思います。練習を積み重ねてきた成果が、見る人にちゃんと伝わる写真がご本人にとってのいい写真ではないかと。群舞なら並びの美しさ、ソロなら身体の使い方。それを伝えるには、撮る位置も大切な要素になると考えています。

ゲネプロから入る理由

バレエ発表会の撮影を依頼される際、「ゲネプロ(通しリハーサル)から入っていただけますか?」とご相談いただくことがあります。私からもゲネプロからの撮影をおすすめしています。

本番では撮れないカットがある

理由は明確です。先ほどお伝えしたように本番中は客席からの撮影が基本になりますが、ゲネプロでは舞台袖や客席の前方など、本番では入れない楽屋などのスナップ撮影も可能だからです。

たとえば、舞台袖から見た出番直前の踊り手の横顔。客席の最前列からあおった全身のポーズ。これらは本番中には物理的に撮影できないカットです。ゲネプロの時間だからこそ残せる記録であり、こうした写真があるとないとでは、最終的に納品するデータの「バリエーション」に大きな差が出ます。

演目の流れと出入りを把握できる

もうひとつ大きいのは、事前に演目の流れをしっかりと把握できることです。

どの曲で誰がどこから出てきて、どこで止まるか。立ち位置がどう変化するか。これを本番前に一度見ているかどうかで、本番中にカメラを向ける方向やタイミングの精度がまったく変わります。

本番は客席の固定位置からの撮影ですから、限られたアングルの中で「ここぞ」という瞬間を逃さないためには、演目の流れが頭に入っていることが前提になります。「次にこのような動きになる」と分かっていれば、その瞬間にピントを合わせて待ち構えることができます。

すべての舞台にストーリーがある

撮影を終えた後、「今回特に印象に残ったシーンはどれですか?」と聞かれることがあります。

正直なところ、特定の場面だけを取り上げて「これが一番でした」とは言えません。

大きな公演でも小さなおさらい会でも、一つ一つの舞台には必ずそれぞれのストーリーがあります。練習がうまくいかなくて悔しかった日がある。先生に何度も同じ注意を受けた日がある。でも本番で自分の力を出し切れた瞬間がある。先生が厳しく指導する裏には、本番で生徒さんに最高の経験をしてほしいという想いがある。

そういう喜怒哀楽のすべてが、舞台に関わる一人ひとりの人生の一部になっていきます。だから私は「特にこのシーンが」とは言えないのです。すべてが等しくその人の人生の記録ですから。

震災で会場が変わった教室のこと

今回の撮影の中で、ある教室が震災の影響で当初の会館を使えなくなり、急遽別の会館で発表会を開催するということがありました。

会場が変わるというのは、想像以上に大変なことだと思います。先生も生徒さんも、直前に色々なことを調整し直さなければならなかったはずです。

それでも、すべての演目を最後までやり切っていました。

カーテンコールで主催の先生が舞台上に出てきた瞬間、会場から大きな拍手が起こりました。先生は泣いていました。私はファインダー越しにその光景を見ながら、少しウルッときました。

こういう場面に立ち会えるのが、この仕事をしていて本当に嬉しいと感じる瞬間でもあります。

バレエ発表会の撮影で「プロ」を選ぶ意味

ここまで読んでいただいた方には少しは伝わっていると思いますが、バレエ発表会の撮影は「カメラの性能が良ければいい写真が撮れる」というものではありません。

舞台撮影が難しいのは、やり直しがきかない環境であることに加え、特殊な舞台環境、そして舞台上で舞う踊り手の良い瞬間をカタチに残す点にあります。

その上で「どの位置から撮れば、この演目の良さが伝わるか」を判断する。この判断力は、機材を良くすれば身につくものではなく、数多くの舞台を撮影してきた経験からしか生まれません。

手法が同じでも仕上がりに差が出るのは、「その踊りの良さをどう見せれば、ご本人やご家族が一番喜んでくれるか」を、その場その場でどれだけ深く考えているか、という一点に尽きると考えています。

撮影の流れと対応範囲

ご参考までに、私が発表会の撮影でお受けしている基本的な流れをまとめておきます。

  1. 事前打ち合わせ:先生と進行表を共有いただき、演目の構成、撮影で特に重視してほしいポイント、集合写真やポーズ写真の有無などを確認します。
  2. ゲネプロ撮影:可能であれば通しリハーサルから入らせていただき、本番では撮れない場所からの撮影を行います。
  3. 本番撮影:客席の固定位置から基本2名体制で撮影します。
  4. 納品:撮影後、約2週間以内にインターネット上の専用閲覧サイトにて写真をご覧いただけます。ご希望に応じて冊子のご用意も可能です。

少人数の発表会やおさらい会にも対応しています。「うちの教室は規模が小さいから…」と遠慮される先生もいらっしゃいますが、規模の大小で写真の価値が変わることはありません。先ほど書いた通り、すべての舞台にストーリーがあります。

おわりに

今回も夏のバレエ祭りで素晴らしい舞台に関わらせていただき、ありがとうございました。

納品した写真が、数年後に見返したときに「あの夏、頑張ったな」と思い出すきっかけになれば嬉しいです。

私自身、まだまだ研鑽が必要だと感じています。今回の撮影でも「もっとこう撮れたのでは」と反省する場面はありました。一つ一つの現場を経験するたびに見えてくる課題を次に活かして、今以上に喜んでいただける写真をお届けできるよう、これからも腕を磨いていきます。

発表会やおさらい会の撮影をご検討中の先生方は、お気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。
事前に打ち合わせをさせていただいた上で、当日の撮影に臨みます。